災害時に被害者となりやすいのが、高齢者や女性、子どもたち。場合によっては性被害につながることもあるという。そうした現実を変えるために何ができるのか、AERA 2020年7月27日号では専門家らに話を聞いた。
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災害時には高齢者だけでなく、女性や子どもも脆弱な被害者になりやすい。避難所に仕切りや更衣室がない、トイレが男女共同、生理用品が足りない──。災害時にしばしば指摘される対応の遅れだ。
理由を、静岡大学教授で「減災と男女共同参画 研修推進センター」(GDRR)の池田恵子共同代表は、こう述べる。
「まず、災害対応の方針を決めるのは男性中心で女性の声が反映されにくい。例えば、避難所の運営責任者は男性で炊き出しは女性と、性別で役割が分けられ女性の意見が届きにくい。そのため、着替えや授乳のスペース、育児や介護用品、女性用品などが不足しがちになります」
また被災者支援は世帯単位のため、支援金や仮設住宅が世帯主名義で支給され、女性は不利になりがちだという。
「被災者ニーズを世帯主だけに聞くことも多く、結果として女性のニーズは把握されにくくなります」
災害時は、雇用や所得などの経済的格差が広がり、介護や子育ての役割を担うことも難しくなって弱い立場の人がますます弱くなる。誰かに頼らなければ災害状況を生き延びていけない人々には、女性や子どもが多い。
このことは性被害につながる余地も生んでいる。東日本大震災や熊本地震でも、避難所などでの性被害が報告された。
■女性リーダーの育成
池田共同代表は、災害時の性被害には環境不備型と対価型の二つがあるという。
「環境不備型は避難所のトイレが男女別でない、間仕切りなしの雑魚寝が続くなどで助長されます。一方の対価型は災害で夫や家族を亡くす、失業するなど、弱い立場の女性に支援する対価として性行為を要求するようなもの。いずれも災害時は普段に増して被害を訴えづらい」
対策として池田共同代表は、地域防災の場でリーダーシップを発揮する女性の重要性を説く。
「福祉や街づくりなどテーマ型の市民活動団体に女性リーダーは多くいます。リーダーシップのある女性たちを行政が地域防災の場に招き入れる。女性リーダーの育成も大切。女性の力を引き出し生かすことが、災害に強い地域づくりにもなります」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2020年7月27日号より抜粋