林:『李香蘭 私の半生』という本を読んでも、それはわかります。
芳村:マリコさんはああいう人と会うべきだったのでは?
林:私、劇団四季の「ミュージカル李香蘭」の初日に行ったときに、トイレですれ違ったんです。「きょうは初日おめでとうございます」と言ったら、「あなたも結婚おめでとうございます」って。それが最初で最後でしたけど、トイレでのすれ違いですから、もっときちんとしたところでお会いしたかったです(笑)。
芳村:私、彼女の日経新聞の「私の履歴書」を読んで、中国でスパイ組織に入れられて殺されそうになったり、牢屋に入れられたりした李香蘭の人生の話を、どうしても聞きたくなったの。友人だった川島芳子の話とかも。だけど、向こうで映画を撮ってるころの話って、まだこれ(口をチャックするしぐさ)だったんです、そのころは。
林:満映時代の話ですね。
芳村:そう。私、山口さんにそのへんの話をじっくり聞きたいと言ったら、「3日ぐらいかけてゆっくり私の半生の話をしよう。オフレコででも話しておきたいことがある」と言ってくれたの。「やったァ」と思ったら、そのあと急に入院しちゃって。
林:まあ、それはもったいなかったですね。ほかにも話を聞いておきたかったなと思う人います?
芳村:いっぱいいた。「料理天国」をやってるころ、中国に取材に行って、(愛新覚羅)溥儀さんと溥傑さん兄弟の……。
林:「ラストエンペラー」ですね。
芳村:そう。弟の溥傑さんと故宮を歩きながらいろいろインタビューしたら、「私は日本に帰るので、そのときにゆっくり話しましょう。いっぱい話があるので」と言って、電話番号まで交換して楽しみにしてたの。でも、亡くなっちゃって。
林:うわあ、それは惜しかったですねえ。芳村さんのお兄さんは、新聞記者だったんですよね。
芳村:そう、東京新聞の。
林:ジャーナリストとしての血が流れてるんですね。
芳村:いや、私は単に外からワーワー、キャンキャン言ってるだけ。