林:素敵! 津川さんの恋人役。
芳村:私、お芝居嫌いなのに4本契約させられて、いやだ、いやだと思いながら松竹の大船の撮影所に通ってたんです。やっと終わって、帰る途中、中華料理屋にマネジャーと入って、マネジャーが「ご苦労さま」と言ってお金を渡してくれたの。そのころモデルなんて1万円ぐらいのギャラなのに、映画は1本30万ぐらいで、4本分100万円以上のお金を渡してくれたのよ。
林:まあ。
芳村:びっくりしちゃって、「私、このお金持って来月ヨーロッパに行きたい!」って言ったの。そしたら外国人の男の人が寄ってきて、「私はパンアメリカンのデビッド・ジョーンズという者です」って。
林:ジョーンズ? あっ、「ヒョー、ショー、ジョー」のあの人だ!
芳村:そう。マリコさんって何でもよく知ってるねえ(笑)。「今、北回りで回ってる女性がいるので、あなたは南回りで世界一周やってくれませんか」って。
林:えっ、兼高かおるさんみたい。
芳村:その北回りの人がかおるさんだったの。「何をすればいいんですか?」って聞いたら、「女性週刊誌とのタイアップ企画で、世界のあちこちで写真を撮ってきてくれればいいんです。世界一周のファーストクラスの切符を差し上げます」って。悪い話じゃないわねと思って、世界一周のファーストクラスの切符をもらっちゃったの。
林:すご~い。
芳村:それで高田美さんというパリ在住の女性のカメラマンと組んで、ヨーロッパじゅう写真を撮って回ったの。
林:あの有名な高田美さん。
芳村:途中でたまたま川喜多かしこさん(ヨーロッパの名作映画の日本輸入、日本映画の海外普及に貢献した映画文化活動家)たちとばったり会って、「カンヌ映画祭というのがあって、岸惠子さんの映画が出品されるんだけど、日本人がいないから、悪いけど着物を着て立っててくれる?」って言われて、私、カンヌにお手伝いに行ってあげたんです。そこでイヴ・モンタンとかと友達になったし、もう少しのところでピカソのインタビューがとれそうだったの。