世界中でコロナ禍が収束するまで、しばらく時間がかかるでしょう。その中で1年後の五輪に向けて、しっかりした強化をしなければなりません。
私は近年の五輪で日本の競泳が結果を残せるようになった原点の「チーム強化」を大切にしたいと思っています。
96年アトランタ五輪でメダルゼロに終わった日本の競泳は、当時日大豊山高校教諭の上野広治さん(現・日本水連副会長)がヘッドコーチに抜擢(ばってき)されます。上野ヘッドコーチは、00年シドニー五輪に向けて競泳代表をチームとして強化する方針を打ち出しました。
01年に国立スポーツ科学センター(JISS)ができると、そこを拠点に科学的なサポート、トレーナー派遣など、所属クラブではできないことを代表チームでやっていこうと練習環境を整えてきました。04年アテネ五輪以降、幅広くメダリストが出るようになったのは、その成果なのです。
個人競技の競泳ですが、代表チーム一丸となって先が見通しにくい困難な局面に立ち向かっていきます。
平井伯昌(ひらい・のりまさ)/競泳日本代表ヘッドコーチ、日本水泳連盟競泳委員長。1963年生まれ、東京都出身。早稲田大学社会科学部卒。86年に東京スイミングセンター入社。2013年から東洋大学水泳部監督。同大学法学部教授。『バケる人に育てる──勝負できる人材をつくる50の法則』(朝日新聞出版)など著書多数
(構成/本誌・堀井正明)
※週刊朝日 2020年8月7日号