名左腕投手には、身長180cm未満と身体に恵まれていない選手もいる。過去には江夏豊(阪神など・179cm)、工藤公康(西武など・176cm)、杉内俊哉(ソフトバンクなど・175cm)。また現役では田口麗斗(巨人・171cm)、松井裕樹(楽天・174cm)らがプロで結果を残している。
極め付けは、阪急やオリックスなどで活躍した星野伸之。183cmの身長はあったが体重74kgと痩せていて球速も出なかった。「大学へ行ったつもりで4年間やる」とプロ入り(ドラフト5位)。カーブなどに磨きをかけ、プロ通算18年で176勝を挙げる名投手となった。
ーーボールゾーンへのカーブ系がキモ。
「最初に驚いたのはストライクゾーン(=ゾーン)の違い。高校まではストライクだった球を取ってくれない。キャンプでブルペンに入って審判の方がついた時に驚いた。ゾーンのすべてが狭くなった感覚なので、実戦で中途半端にストライクを取りに行くと簡単に打たれる。まずゾーンに慣れることが重要」
ゾーンの違いについては、多くの投手がプロ入り後に影響があったと語る。
特に高卒左投手は影響を受けやすい、と前田は続ける。
「左投手はストライクからボールへのカーブ系が武器。ゾーンの広い高校では、かなり外れていても振ってくれる。しかしプロのゾーンは狭いから、良いところに投げないと振ってもくれない」
ゾーンが狭くなれば、打者の狙いも絞りやすくなる。大きな武器を取り上げられてしまうのだ。
高卒でプロ入りし投球スタイルを変えて結果を残したのは楽天・松井裕樹だ。
「高校時代、カーブ系(本人はスライダーと語っていたが)でほとんど空振りが取れた。でもプロでは見逃されることが多い。こうなるとストライクも取れなくてツラくなる。だからカーブ系の比率を少なくして、真っ直ぐやチェンジアップが多くなった。これは抑えで短い回を投げるため、走者を出さないためというのもあった。先発転向して今後はどうなるか楽しみ」