悩みました。悩みの時代は、ずいぶん長かったように思います。結果、僕なりにつかんだ答えは、直感。つまりそれ以外を、
「手放すしかない」
これでした。いいことも、悪いことも、ぜんぶ受け入れて、そして手放す。
ボーッとする。すると、直感が舞い降りてくる。それを信じて、そこで何が起こるか、自分で自分を見届けよう。深く考えるのが不得手な僕にはこれしかない。
あんなに覚えた台詞すら同じです。どんなに自分の細胞と密着した台詞でも、演じたそのときに音もなく成仏していく。スーッと体から抜けていく。おかしな言い方になりますが、よく抜けきったときほど、後味のいい演技になりました。撮ったら手放す、撮ったら手放す、そのリズムで前進できる。そのためには、過去の怒りや大失敗、懺悔や消えない後悔の念も生きながら手放すしかない。そう気づいたのは、ここ数年のことです。