落語家・春風亭一之輔さんが週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「おでん」。
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さほど『おでん』に惹かれない私が『おでん』について思うこと。
「高いおでんはめちゃくちゃ高い」
冒頭からアホなツイートの典型のようなことを言ってますが、過去に一度だけ先輩に「銀座のおでん屋さん」に連れていって頂いたことがあります。店の中に値札はなく、一見さんお断り感がビンビン漂う雰囲気に圧倒されてほとんど記憶がありません。玉子一個の値段を聞いて腰を抜かしたのと、お通しにやたら巨大なじゅんさいが出たのだけはうっすら覚えてるのですが、おでんの味は一体どうだったのかまるで覚えていません(ちなみに「じゅんさい」という単語も出てこず「東北」「ヌルヌル」「食べ物」で検索してようやく思い出しました。ただしこれは加齢のせい)。おでんの味がわからなくなるほど、おでんの値段を高く設定しないで欲しい。だっておでんなんだから。
「不味いおでんはめちゃくちゃ不味い」
「個性を集める」って大変ですね。一つひとつはいいのに、チームにするととんでもなくマイナスに転じる場合があります。私が子供の頃におでんを食べるのは自宅の夕食か学校給食の時くらいでした。正直、心躍るメニューじゃなかった。そもそもおでんって白飯に合うものではないし。基本、家庭も給食も出汁が薄味だし。練り物も出来合いでなんか雑味があって、ウインナーとかロールキャベツなんてハイカラなものも入ってないし。それに給食の大きな食缶の中で混ざりきったおでんは、だいたい溶けたジャガイモと昆布の臭いがまんべんなく染み付いていて、「餌感」が凄かった。おでんを不味く作るのは意外と容易いようですが、美味いおでんは一体どこにあるんでしょう。
「コンビニのおでんは最高」