緊急事態宣言後、70代以上は約2割、80代以上だと約4割の患者が病院に来なくなった。薬だけを求める人もいる。
一方、新型コロナウイルスの影響で医療機関が機能せず、必要な医療を受けられない事態も起こっている。都内の介護施設に勤める男性(53)の両親は、山口県に暮らす。父親(86)が寝たきりで在宅介護を受け、かかりつけの訪問診療医がいる。
3月下旬、父親が高熱を出し、かかりつけ医に連絡すると、診察を断られた。患者に感染疑いが出たため、2週間は診察できないという。県内に住む看護師の姉が実家に行き、様子を見た。だが、10日後に容体が急変、総合病院に救急搬送され、腎盂炎による敗血症と診断された。
幸い、2カ月の入院を経て、父親の症状は軽快、自宅に戻ることができた。
医療機関として感染を広げるわけにはいかないという姿勢はわかる。だが、憤懣は消えない。
「仕方がないとわかってはいても、診ていただきたかった。私たち家族は、病院ではなく自宅で父を穏やかに看取ることを願ってきました。入院したきり最期に会えなかったら、悔やんでも悔やみきれない」
かかりつけ医への信頼を失い、男性は訪問診療の医師を代えた。
病院に行かなくなるということは、病気の見逃しが起こるということだ。AERAが行った医師1335人へのアンケートでも、受診控えにより、進行がんや重症者が増加する可能性を指摘する声が多く寄せられた。
国立がん研究センター中央病院検診センター長の松田尚久さんも、「がん検診やその後の受診機会を逃すことで、進行がんが増えるリスクがある」と話す。
同センターは感染拡大を受け、今年3月末に人間ドック方式の検診を停止した。6月から受診者数を絞るなど段階的に再開したが、通常1日12人程度の受診数は3分の1に。8月から人数制限は解除、10月から正常化の予定だが、予約はすでに埋まっている。だが、自費診療で人間ドックを受診するのは、そもそも健康意識の高い人々だ。