この公演の最中に、三谷さんが突然、楽屋に来られました。
「再来年、大河ドラマをやるんですが、出てくれませんか?」
しかも、真田昌幸役だと言う。びっくりしました。
2016年の大河ドラマは真田一門の物語なのか──。30年前の『真田太平記』の現場の記憶が、一気に頭を駆けめぐりました。あの丹波哲郎さんの真田昌幸を超える役者はどこにもいないだろう……。
そんな僕の心の声が聞こえたのでしょうか、三谷さんが言いました。
「僕もあのドラマ、大好きで観ていました。丹波さんを超えましょう!」
そんなこと、できるんだろうか! 内心、無理だと思いながらも魅力的な丹波さんの笑い声が蘇り、反射的に胸が弾みました。わかりました、三谷さん。
それにしても、プレッシャーは大きかった。ですが、台本が何本か届くうちにご想像通りに三谷ワールドにはまっていき、本当に「やれるかもしれない」と。文字だけで、ぐいぐいと引っ張られました。やります、三谷さん。
こうして『真田丸』が出帆しました。