小林さんは、女子学生をめぐる問題を「社会運動」「年代ごとの歴史」「ミスコンと読者モデル」「就活での闘い」などの切り口から、検証していく。読んでいると自分の学生時代はどんな流れの中にいたのか、再確認できる面白さがあるだろう。一方、男女雇用機会均等法が施行されてから30年以上、女性をめぐる状況が変わっていないことにも暗澹(あんたん)としてくる。

「解決策は政官財界のリーダーに女性を増やすことです。といっても男社会に疑問を持たない女性ばかりでは、今と何も変わらない。声を上げ始めた女子学生のように、自分で考え、行動する女性が増え、社会がそれを受け入れることで、全体が良くなり明るくなると思います」

 戦時下ではその日一日生き延びることが「闘い」であるように、日本社会が若い女性にとっていかに生きづらいものかを、あらためて教えてくれる一冊だ。(ライター・矢内裕子)

■東京堂書店の竹田学さんオススメの一冊
『不安の時代の抵抗論 災厄後の社会を生きる想像力』は、広がる不信や諦念に抗う一助ととして、コロナ禍の今こそ読んでほしい一冊だ。東京堂書店の竹田学さんは、同著の魅力を次のように寄せる。

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 震災や原発事故などの厄災後を生きるための希望と抵抗はいかにして可能か。著者は自身の経験と実存を重ねて私たちが生きる「不安の時代」の絶望を突き詰める。1990年代以降の貧困と格差が拡大する日本社会の変容を振り返り、政治哲学や現代思想を渉猟(しょうりょう)する。そして貧困や過労死、自殺などと隣り合わせの人びとにとっては、学者の社会診断や、正義や民主主義を問う数多くの思想が希望となり得ない現実を描く。

 そんな中、3.11以後の反原発デモなど路上の政治に伴走し、様々な実践や人と出会うなかで、絶望した自らの身体になお残る希望を発見する。弱く脆い私たちが、不安と絶望の渦中で上げる「もうたくさんだ」という叫びに宿る知性と連帯への意思に著者は賭ける。本書は現在の感染症拡大下で広がる不信や諦念(ていねん)に抗(あらが)う一助となるだろう。

AERA 2020年8月24日号

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