


今もまだ残る古き良き店を訪ねる連載「昭和な名店」。今回は半蔵門の「天重本店」。
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東京・半蔵門。ビルが立ち並ぶなかに、昭和40年代後半に建てられた2階建ての天婦羅(てんぷら)屋がある。入りやすい店のように見えるが、田中角栄が生前、利用したというから、実は超高級店なのか!?
「創業は1965年か、それ以前。先代は『何度も来たいと思っていただけるように』と、ご利用しやすい値段設定にしたんです。角栄さんも密談での利用ではなく、気楽に食事を楽しんだそうです」(2代目店主の眞柴正規さん)
1階はテーブルとカウンター、2階は座敷。角栄は6畳の個室を利用したというが、カジュアルな雰囲気の掘りごたつの部屋だ。
薄衣のタネを胡麻油とサラダ油を独自に配合した油で揚げた天婦羅は、カラッと軽い。厨房を預かる石原昇店長によれば、
「角栄さんの事務所や入院先に、出前もしました。しょっぱいのがお好きだそうで、醤油を足して味を濃くした汁をかけたお重にしたと伝え聞いています」
旬の魚の天婦羅をあてに一杯。庶民にも優しい値段が嬉しい。(取材/文・菊地武顕)
「天重本店」東京都千代田区麹町2‐7/営業時間:11:30~14:30L.O. 17:00~21:30L.O.(夜は月~金のみ)/定休日:日・祝
※週刊朝日 2020年8月28日号
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