その後は負けが2つ続いたものの、8月15日のDeNA戦ではノーヒットノーランという最高の形でチームの連敗を5で止め、23日の阪神戦でも粘りのピッチングでチームの最下位転落を防いだ。開幕4連勝の時点では「僕がイメージしてる小川からはまだまだかなっていう感じはする」と評していた高津監督も、今や「自信を持って送り出せるっていうのが僕の心境かな」という。

 今季の小川はここまで10試合に先発して、うち7試合がクオリティースタート。「5回、6回で勝ち投手になったとしても満足はしないですし、7回、8回を投げて(リリーフに)つないでいくっていうのが自分の仕事だと思う」と語る。

 ヤクルトで2ケタ勝利を挙げた日本人投手は、前述の2015年の石川と小川が最後。もう何年もエース不在の状態が続いているが、数々の悲劇を乗り越えて「流れに乗った」男が今、燕のエースとして名乗りを上げようとしている。(文・菊田康彦)

●プロフィール
菊田康彦
1966年生まれ。静岡県出身。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身。2004~08年『スカパーMLBライブ』、16~17年『スポナビライブMLB』出演。プロ野球は10年からヤクルトの取材を続けている。