暑さ対策では、電気を使わずに涼しくなるグッズが大人気だ。国内126店舗のペットショップを展開するイオングループの「ペットシティ」(千葉市)では、ペットが寝そべるとヒンヤリする「冷感ジェルマット」や首に巻く「ひえひえマリンバンダナ」が人気を集めている。
「今年の夏は、ペットがお留守番している最中に計画停電でクーラーが止まる可能性がある。それを心配した飼い主の購入が増えています」(営業企画部)
こうした暑さ対策グッズの売り上げは、前年比2割増で伸びているという。
さらに、余震への対策も進んでいる。
「いざという時にペットを運ぶキャリーバッグを買うお客さまが増えています」(ペット用品最大手の「アイリスオーヤマ」広報室)
震災前と比べると2倍近い売れ行きで、プラスチック製よりも、軽くて折り畳める布製が人気だ。
「もしもの時にかさばらないのがポイント。関東・東北地方を中心に売り上げが伸びています」(同)
キャリーバッグを取り扱う都内のペットショップによると、バッグの側面にペットの出入り口が付いているものが売れ筋だ。
「バッグを置くと、そのままペットのハウスとして利用できる。避難所で生活することを考えたうえでの選択でしょう」(店員)
さらにさらに、ペットが迷子になってしまった場合を想定して、ヒット商品となっているのが「迷子札」だ。ペットの名前や飼い主の連絡先を書いて首輪に着けるペンダント型が多い。皮膚下に埋め込む電子型の迷子札であるマイクロチップも品薄になったという。
「今回の震災でペットと離ればなれになった例もあり、飼い主の意識が高まった。迷子札の売り上げは平常時の3割増です」(ペット用品通販の「ペピィ」)
ペットを愛するあまり、こんな相談事も寄せられる。
「避難所では行儀の良いペットが人気者です。もしもの時に可愛がられるために、しつけに関する問い合わせが増えています」(仙台在住のブリーダー)
1兆円規模ともいわれる国内ペット市場。可愛いペットのためならお金は惜しまないようだ。
◆3・11 あの日から飼い主たちは◆
地震に津波、果ては終わらぬ放射能の不安--。未曽有の事態を前に、ペットの飼い主はどう対応したのだろうか。
過敏に反応したのは、被災地よりもむしろ、都市で暮らす愛好家たちだ。
東京都に住む大山さん(仮名)は"わが子"を守るため、1・5リットルで千円以上するハワイで取れたピュアウオーターなる水を愛猫に飲ませているという。
「震災から放射能を気にして、猫用の水を探していました。猫は腎臓が弱いので、マグネシウムなどを含まないというハワイのピュアウオーターを飲ませています。え? 私? 私と旦那は相変わらず水道水を飲んでますよ」(大山さん)
大山さんのように、水に気を使っている飼い主は多い。東京都内のドッグランでは震災後、備え付けの水道水ではなく、持参したミネラルウオーターを犬に与える飼い主が目立っている。
なかには、
「原発の事故が収束するまで東京に戻らない」
と、犬を連れて広島へ逃げた人もいた。
放射能を恐れる飼い主はみな、
「体が小さい分、私たちより影響が出るのでは」
と口をそろえる。
実際のところ、どこまで気にするべきなのか。