まず、犬についてはどうだろう。ペットに対する放射線の影響について詳しい日本動物高度医療センター(川崎市)の夏堀雅宏院長によると、放射能の影響はヒトも犬も大きな差はないという。

 飼い犬が被曝する可能性が高いのは、外を歩き回る散歩の時間だ。各地の調査では、側溝や雨どいの下、公園の草むらなどで周囲よりも高い線量が計測されたケースが多い。いずれも、犬たちが興味津々で近づいてにおいをかいだり、転げ回って遊んだりしがちな場所だ。

 このため、北里大の伊藤伸彦教授(獣医放射線学)はこう指摘する。

「心配ならば、放射性物質がたまりやすい場所に近寄らせないことが大切です」

 放射線量は雨の後に高くなりがちなので、水たまりにも近づかせないほうがいいという。

 だが、いくら気をつけても、飼い主の言うことをちゃんと聞く犬ばかりではない。このため、前出の夏堀さんはこう言う。

「少なくとも、犬の体についた泥を部屋へ持ち込ませないようにしたほうがいいでしょう。室内に入れるときは、手足とおなかの毛を、草むらでゴロンとしたときには、背中もふいてあげるといい。毛が長い犬は表面積が広くなる分、放射性物質がつきやすい。とはいえ神経質になる必要はなく、普段どおりのブラッシングや、定期的なトリミングをしていれば心配はいりません」

 エサや水からの内部被曝は大丈夫なのか。

「与える水は水道水で全く問題ありません。ペットフードは、心配ならば、原料や産地を調べて、自分が安心できる場所の商品を選べばいいのではないでしょうか」(夏堀さん)

 ただ、犬は人間よりも寿命が短いので、低線量の被曝であれば、「寿命を全うするまでに症状が出る可能性は低い」(同)という。

 では、の場合はどうだろう。

 室内から出さない「家猫」の場合は、飼い犬のように屋外で被曝する可能性は低いが、家の中と外を自由に行き来できる「外猫」だとやや事情が異なる。

 前出の伊藤さんが言う。

「とくに、地方で暮らすお年寄りは、猫を自由にさせていることが多い。半日から長いと数日間、家に戻らないことも珍しくないが、その間、どこで何をしていたのかをつかむのは困難です」

 毛づくろいで体にたまった体毛を吐き出すために、外猫は放射性物質で汚染された外の草を食べたり、ときにはネズミを食べたりして、わが家に帰ってくるかもしれない。

 体内に入った放射性物質は尿や糞とともに排出されるので、「排泄物は手早く片づけることが大切」(伊藤さん)だ。

 魚や鳥、ウサギなど、ほかのペットの場合はどうか。

 伊藤さんが言う。

「基本的に屋内で飼う魚や鳥の被曝リスクはほとんどなく、心配はいりません。とくに、水は空気中の放射線を遮るため、水槽の中で泳ぐ魚は外部被曝からより守られることになる。心配すべきは、水槽に入れる水が汚染されているかどうかですが、基準値内の水道水であれば大丈夫です。庭で飼うウサギなどは多少、汚染の影響を受けるかもしれませんが、人が普通に暮らせる地域であれば問題はないでしょう」

 ウサギは野菜を食べるが、東日本産の野菜を与えても心配ないのか。

「外国産の野菜でも農薬の心配がありますし、東日本産だから危険だとは言えません。旧ソ連のチェルノブイリ事故から数年たった時期に日本の農家が使っていた輸入飼料のなかには、いま日本国内で出回っている東北や関東地方産の野菜よりも放射能を多く含むものもあった。それほど神経質にならなくても大丈夫です」(伊藤さん)

 そもそも魚やウサギ、マウスなどのげっ歯類は被曝に対する耐性がヒトより強い。犬<ヒト<サル<ウサギ<魚・虫の順番に、耐性は強くなっていくという。

 ある生物の集団に放射線を照射した場合、半数が死に至る線量の強さを「半数致死線量」という(最終ページの表参照)。

 たとえば、ヒトの半数致死線量の推定値は3~4グレイ(Gy≒3~4シーベルト)だ。ヒトに3~4グレイの放射線を照射すると、骨髄の細胞が損傷して白血球や赤血球、血小板が減少する。まったく治療せずにいると、30日以内に半数が感染症などを発症して死に至るという意味だ。

「ヒトと犬、ヤギは同程度の耐性を持ち、霊長類のサルは約1・5倍です。ヒトより体の小さいハムスターは人の約2倍で、ウサギに至っては放射線への耐性が2倍以上になります」(伊藤さん)

 人間より体が小さいからといって、必ずしも放射能に弱いというわけではないというのだ。

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