豊原:ここまでのたどり着き方が小泉さんと僕では少し違うのが、面白いなと感じます。僕の場合、脇役からオーディションを受けるようになり、劇団の仲間と芝居をつくってという過程に、「既成のものを壊したい」という“抵抗”の気持ちがあった。

小泉:歩いてきた道は、正反対かもしれないですね。私はどちらかというと許容しながら生きてきたというところがあって、大きなものを背負うことの重みを感じながら生きてきた気がします。全然違う景色を見ながら生きてきて、ここでクロスしたという感じですかね。

豊原:身体を使って一生懸命働けるのは、あと10年だろうな、という気持ちもあります。

小泉:私の場合、つくることに集中する、ということが一番やってみたかったことです。今まではどこか自分ありきでものづくりがあったと思うのですが、そうではなく、裏方として作品をつくる。60、70代になったらやりたいことはまだまだあるのですが、プロデューサーは身体が元気でないとできないから。

豊原:まずは映画「ソワレ」を見たお客さんがどういった感情を持ち帰ってくれるのかを見届けたい。「新世界合同会社」としては、新しいことを生み出そうとする人々のアイデアが集まる場所になればいいなと思います。

小泉:「新世界」のスピリットを共通のものとしながらも、いろいろなチャレンジをしていけたらいいなと。そして作品を受け取った人やその余波を横から見ている人たちに少なからず影響を与えられたら。そうすれば世界が動いていく。そんな気がしています。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2020年8月31日号より抜粋