小泉今日子、豊原功補らが立ち上げた映画制作会社「新世界合同会社」による映画「ソワレ」の公開が、2020年晩夏に控えている。AERA 2020年8月31日号に掲載された記事で、初めて俳優から制作側へ回った2人が、その思いを語った。
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「ソワレ」の監督である外山文治さんと出会ったことから二人は2018年に「新世界合同会社」を設立した。制作側に回ろう、という気持ちが芽生えたのはなぜか。
豊原功補(以下、豊原):原作やキャストありきでリスクを回避した映画づくりが平成の時代に確立されていきました。恐らくこのシステムがうまくできているからこそ、それしか見えなくなってしまっている部分がある。“日本の映画の景色”が単一化されてきたのかな、という気がしていて、そうした気持ちが少しずつ蓄積されてきたのだと思います。だから、プロデュースの機会を得たときに「やめておこう」という選択肢はなかった。
小泉今日子(以下、小泉):私の場合は加えて「自分の年齢」ということもあります。50代から先をどうやって生きていくのか。何を残せるのだろう。私たちは昭和の世代で、若いころに本当にたくさんの才能ある監督たちに出会い、育ててもらいました。“古きよきもの”だけがいいとは思っていなくて、若い人たちがつくっていくものに期待はしているのですが、そうしたものを繋げられる世代なんじゃないかな、と。
豊原:小泉さんはすごく実感としてあるのでしょうね。テレビドラマや映画の世界で、素敵な監督たちと過ごした時間があるからこそ「次世代への思い」が強いのだろうな、と思います。
小泉:いろいろな人を見つけてあげたいし、その人が輝いていくところを見たら自分の喜びになるのだろうな、という気持ちはあります。自分たちが教わってきた素敵なことが役に立つときがあるのならいいな、と。30、40代のころは「50歳になったら考えよう」と後回しにしてきたことがたくさんあったんです。いよいよ50歳を迎えると「もう時間がない」と。まずはやってみよう、と自分の会社をつくり、舞台のプロデュースを始めたのがちょうどそのころです。