「野球人生最大のピンチ。診断されたときはショックだった。今は不安な気持ちしかない」

 6月10日、右肘の側副じん帯再建手術を受けたレッドソックスの松坂大輔投手(30)。横浜高校野球部の元部長で彼を育てた恩師・小倉清一郎氏(66)は、そんな教え子を今どう見ているか。

「『30歳過ぎたら必ず壊れるよ』と、私は本人に2、3年前から、ずっと言ってたんです......」

--なぜ2、3年前から?

「キャッチボールのとき、正常な投げ方じゃなかったんです。肘が下がっていて、無理して肩と肘を使う"かつぎ投げ"というもので、理論から外れた投げ方です。西武に入って3、4年目ぐらいから、その傾向はありました。悪いクセがついてしまった、ということです。キャッチボールだけでなくピッチングでも、悪いときは全部そういう投げ方になっていました。あの子は、自分は丈夫だって頭があるから......」

--過信があったと?

「15歳のときから一度も故障したことがなかったんです。いくら投げても壊れないめちゃくちゃタフな子で、私が教えた子の中で一番タフです。一日に800球投げたこともありましたが、それでも次の日、何でもないんですよ。(笑い) 50メートルぐらいダッシュさせて捕らせるノックがあって、50本捕るまでやるんですが、捕れるかどうかギリギリのところに打つので4、5本に1本の割合でしか捕れないんです。つまり選手は50メートルダッシュを約250本走ることになりますが、あの子は4時間ぐらいかけてやってました。それも真夏にね。バケモノです。
 何やったってケロッとしてて......俺は壊れないんだという気持ちがあったんだと思うんです。だけど、いくらタフでも、いつかは壊れる。そんな不安を、私はずっと持ってました」

--手術後の活躍を祈るばかりだが。

「レッドソックスとは来年まで契約があるわけで、もらっているお金の分、働かなきゃいかんでしょ。復活するしかないんです」

--復帰したら、どんなピッチングをしてほしいか?

「松坂のピッチングスタイルは変わらないと思いますが、僕は"クローザー"という手もあると思います。変化球が多彩で球が速いのだから適性がありますし、メジャーでは先発より抑えのほうが負担が少ないんじゃないかと思うんです」

--日本球界への復帰は?

「とんでもない。ここまで上り詰めたんだからメジャーで野球人生をまっとうしてほしいし、アイツにしても、松井(秀喜)選手にしても、日本に戻っても野球はやらないと思いますよ。それに松坂は野球を引退しても、そのままアメリカで生活するような気がします」 (渡辺勘郎)


週刊朝日