アンケートでは「すぐにイライラする」「最近、集中できない」がストレス反応の上位を占めました。ならば「宿題ができずにイライラしている子」というのは、両方のストレス反応が同時に起きている可能性があります。大人からすれば「いつまでも宿題をやらずに怠けている」と思ってしまいがちですが、本人は悩みを抱えているのかもしれません。
今年、専門学校に入った女子生徒(18歳)は、入学してから現在に至るまでの5カ月間、課題をため込んでいます。課題に自分の名前を書いて提出することすら「苦しくてできない」と。彼女は高校時代、いじめが原因で不登校になり、専門学校には再起を図るつもりで入学しました。しかし、コロナ禍で休校になり、山のように送られてくる課題に対応できず、やろうと思っても「頭が真っ白になる」そうです。宿題がこれまで以上にできない、というのも見落としがちなストレス反応のひとつです。
(3)親自身が苦しくて、子どもの負担が見えにくい
アンケートでは、保護者に対しても、心の健康度をチェックしています(うつ病・不安障害などをスクリーニングする「K6」日本語版を用いて測定)。調査結果によると、最上位の深刻度である「極高度(深刻なこころの状態のおそれがある)」と判断された保護者が2割。「中程度(心に何らかの負担がある)」の親が6割を占めていました。当然のことながら、コロナストレスは子どもだけでなく親にもあります。親が精神的に苦しければ、子どもの苦しさも見えづらくなり、「感情的に叱ってしまうこともある」と明橋医師は指摘しています。
以上が、親でも見落としがちな3つのケースでした。保護者の負担にも触れましたが「親がガマンしているから、子どももガマンするべき」というのは暴論です。子どもの苦しさと親の苦しさは分けて考えるべきです。親子といえども、親と子は別人。苦しい子どもは救われる必要があり、苦しい親も救われる必要があります。