最も身近な潜在顧客に挙げているのが、サッカー少女だ。彼女たちの公式戦や、大規模な練習試合の大会と、同施設内でキックオフ時間をずらすことで、少女選手やその家族、友人たちにも、観戦機会を提供できる。

「女子選手、特に、小さい子供たちにスタジアムへ来て欲しいんですよね。小中学校の小さな子供たちから高校生、そういった年代の少女たちに来てほしい。少女たちの試合時間となでしこリーグの試合時間が重なってしまうという部分がありますので、ホームタウン以外の中立な第3地域での試合開催も考えています。

 それには、グラウンドの確保が難しいという部分があるかと思うので、都道府県協会と連携を取る必要があります。毎試合時間をずらしてもらうというのは難しいかと思うんですけれども、例えば、なでしこリーグのチームがない都道府県で試合を企画することで女子サッカーの魅力を発信する機会を作れれば協力を得やすいのではないかなと思っています」

 直接サッカーとは関りがなかった、まったく新しい層へのアプローチも模索中だ。

「『さよなら私のクラマー』(講談社刊)という高校女子サッカーが舞台のマンガが、単行本で12巻出ています。その『さよなら私のクラマー』とコラボ、連携をして、例えば限定グッズを試合会場で販売するとか、そういうことをして、マンガの読者にも会場へ来ていただきたいと思っています。

 今、サッカーのコアなファン以外の方も開拓していかなければいけないというふうに思っているんです。女子サッカーのプレーヤー。そして、『さよなら私のクラマー』の読者。そういった潜在的な観客層は、それぞれ、別々の理由があって会場に来ていないんですよね。その別々の理由を解消できる仕組みを、ひとつずつ作っていかなければいけません」

 そのひとつとして、主婦の方に来場していただくために、WEリーグの施設内に託児所を作る案もあるという。こうしたスタジアムに初めて来た観客でも、試合を見て楽しめるように「この試合の最大の見どころ」といったものを提供することも考えているが、最良の先生は「友人、知人が教えてあげること」。ここは「WE(私たち)リーグ」を担う、既存ファンの力の見せどころだろう。

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黄色い歓声が起こるようなスタジアムに…