不安やストレスによる脳機能の低下には、「書き出すこと」が有効だと篠原教授は言う。
「困った」「どうしよう」など、頭のなかをぐるぐるしているストレスを書きだすだけでも、カウンセリングを受けたときのように頭のなかがすっきりし、脳のメモ帳が使いやすくなるという。
「不安やストレスを外に出すことが大事なので、ネガティブな言葉を使ってもかまいません。誰かに打ち明けることも、効果的です」(篠原教授)
また、脳のメモ帳の容量が少ない時は、「ToDoリスト」としてリアルなメモを作ればいいという。その時は、時系列に沿って次に行うことをイメージできる書き方をすれば、記憶に対する負荷が減り忘れにくくなるという。こうして脳の負担を減らすと同時に、「脳の基礎体力」を養うことも大切だ。
「脳は筋肉と同じで、鍛えれば鍛えるほど強くなります。大切なのはやるべきことをストレスと感じるか、脳のトレーニングととらえるか。いやだな、大変だな、と思っているとコルチゾールというストレス物質が分泌され、脳細胞のつながりが悪くなります。スピードとともに正確性が求められる、同時にいくつものことをやらなければならないなど、『負荷が大きいときほど脳トレのチャンス』と前向きにとらえれば、脳を鍛えることができます」(同)
オンライン疲れに負けない脳を作る方法は、いろいろある。
体の状態は脳に影響を与えるため、たとえば背筋を伸ばすだけでも認知機能が向上する。コロナ禍で運動不足の人が増えているが、運動は脳の健康に欠かせない。有酸素運動や筋トレなどには、血管を生み修復する血管内皮細胞増殖因子(けっかんないひさいぼうぞうしょくいんし)、脳細胞を生み育てる脳由来神経栄養因子(のうゆらいしんけいえいよういんし)の分泌を促す効果がある。
そこに知的作業を組み合わせ、デュアルタスク(二重課題)にすることで負荷が増し、さらに強度の高い脳トレにつながるのだという。たとえば、ウォーキングしながら100から7を引いていく、風呂場で頭を洗いながらしりとりをする、ジョギングしながら英語のリスニングをする、など。そうすると脳は混乱し、混乱を整理しようと働き、脳の活性化につながる。