上白石:「恋つづ」以前と以後で周りがどんどん変わっていったんです。それを見て、逆に落ち着いていく自分がいて不思議でした。「君の名は。」の時もそうだったんですけど、「あの作品、なんかすごいことになってるな」って、どこか他人事みたいに感じて。自分という存在が広がれば広がるほど、「自分は何を大事にしたいんだろう」とか「私はどう思っているんだろう」ということをきちんと見つめたいなっていう考えが芽生えてきて。そういう意味では、一番冷静かもしれないです、今が。
自分が思っていること、自分が大事にしたいこと──。このアルバムを作った今、それは言葉にするとどういうことなのか。
上白石:「プロってこういうことなんだ」というのを、錚々たる方々とご一緒して痛感したんです。みなさん絶対妥協しないんですよ。それを感じて身が引き締まったというか、責任を持たなきゃって思いました。
「私をこうとらえてほしい」とか「こういう見せ方をしたい」というのは自分の中にはなくて。というよりは、何かを知るきっかけになったり、媒介する存在でありたい。そのために必要なスキルを身につけたいと思っています。音楽だけでなく、映画もドラマも舞台も、そういう存在としてかかわっていきたい。
(編集部・藤井直樹)
※AERA 2020年9月7日号より抜粋