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YouTubeでは、演者にファンをつける戦略とコンテンツにファンをつける二つの戦略があります。どちらも「視聴者が求めるものを提供する」ことができれば成功しますが、個人的に適性がかなり問われるのは前者の「演者にファンをつける戦略」だと思います。演者は、文字どおり「演じる者」です。これは、テレビでもYouTubeでも舞台でも声優でも同じです。
特にYouTubeなどのインターネット上のコンテンツの場合は、視聴者とのコミュニケーション能力が問われます。コメントや質問への対応、ファンミーティングをした際の対応、街中で声をかけられた際の対応など、多くの要素が必要です。ファンに応援していただくいことは、好きになってもらうこと、惹きつけ続けられる能力が必要なのです。
この面で、多くの演者が葛藤することが、「演じている自分」と「本当の自分」の乖離です。視聴者やファンは、演じているキャラクターが好きなので、本当にファンのことを思うのであれば、キャラクターを演じ続ける必要があります。昨今、YouTubeにチャンネルを開設した手越祐也さんは、典型的な例です。彼のチャンネルは開設当初は非常に強い勢いを持っていましたが、8月は1日の再生回数が10万回前後の日もあり、登録者数の増加スピードも鈍化しています。
彼のチャンネルのコンセプトは、「素の手越祐也を見せたい」というものでしたが、彼のファンは本当に「素の手越祐也さん」をみたがっているのか、という根本的な問いが存在します。手越さんはジャニーズで活躍していた際、王子様キャラクターでした。どんな女の子もお姫様のように扱い、ファンを「子猫ちゃん」と呼び、歯の浮くようなセリフを言う、少女漫画やフィクションの世界の”王子様”を体現したようなキャラクターでした。この”王子様”の部分がウケていたのだと思います。その手越祐也さんが過去の女性遍歴や本性などの素の部分をチャンネルや本で披露したら、夢が崩れてしまう可能性があります。
この点については、以前もコラムで書きましたが、実際に数字が落ちていることが結果をあらわしています。
「テレビでは見られなかった手越祐也さん」を見せるのは非常に有効で、芸能人にとっては特に、とても良い企画です。ですが、あくまでも「王子様の手越祐也さん」で居続ける必要があると私は思います。例えば、「とっても犬が好きなのに飼い犬が懐いていない」などの部分は、王子様の知らなかった一面としてファンにも受け入れられる要素です。YouTubeで成功する人々は、演者としてのキャラクターの範疇を外れないように、企画をします。ファンが求めているキャラクターを見いだして演じる作業です。ブランディングと呼ばれます。