C:派閥抗争はある。銀行はメーカーのような商品がないので、成果の判定が難しい。だから自分を理解してくれる人たちで群れる。部署による“部閥”が“学閥”よりもあるのではないか。

A:原作にも出てくるが、合併した旧行間のあつれきも。ある銀行では出身行によって使うエレベーターが違っていたというのは有名。それぞれの人事部が作成した「裏ファイル」を、トップが求めても見せなかったこともあったそうだ。

C:本社への金融庁検査は、ドラマよりもひどかった。女性行員が恫喝(どうかつ)されていた。「トイレに了解なく行くな」と。「黙って行ったら逮捕するぞ!」と。ヤクザよりひどい恫喝だった。(銀行にとって都合の悪い資料を持ち出さないように)女性行員がトイレに行く場合は、女性の検査官が身体検査をした。

B:バブル経済後の不良債権処理がピークだった頃、「資産査定」という融資先企業の格付けがあった。当時は支店の課長代理。金融庁の検査マニュアルに基づいているかをチェックする資産査定面談では、本社に呼ばれて金融庁の検査官に支店の主な案件を説明する。ただ、ドラマみたいに金融庁の検査官とは敵対しない。金融庁の人はもっとマイルド。「どんなマーケットか」「客層はどうなのか」と正しく知ろうとしていた。銀行も判断の根拠を示して正直なことを話します。

A:検査官に盾突くことは考えにくい。金融庁と銀行の関係も、親分と子分の関係に近い。お上の言うことは絶対、という意識が強い。資産査定は廃止されたが、銀行も融資先の企業も、守りの姿勢ばかりが強くなった。減点主義の姿勢はより強くなり、取引先の攻めの経営を弱め、経済全体の停滞を招いた面がある。

D:政治家の介入もかなりあると思いますよ。ドラマのような債権放棄だけでなく、融資の紹介や支持者の親族の就職までいろいろあります。地縁血縁で縛られた地銀はともかく、都市銀行は潔癖な人や正義感の強い人が融資部門にいることが多く、無理筋な政治家とは闘うケースがあると思います。けれども、金融庁の指導など許認可が関わると事情は異なる。

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