「球団全体として不足していた。他球団は早い段階で育成の施設充実ならびに組織改革などを行った。ところが阪神は2軍施設改修など、育成関連の前に、まずは甲子園球場の大規模改修を行った。チームが弱くとも甲子園に客を呼びたい、という姿勢がまずは優先されていた」

 甲子園は『21世紀の大改修』と銘打ち、07年から段階的にリニューアル工事を敢行、世界に誇れる姿に生まれ変わった。その間、2軍が使用する鳴尾浜球場を『タイガース・デン(虎の穴)』と命名したが、使用し始めた94年当時と大幅な変化はない。「尼崎市へ移転か?」という話も出ているが、その間に他球団にかなりの遅れをとってしまった。ソフトバンクの『HAWKSベースボールパーク筑後』(16年~)、DeNAの『DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA』(19年~)などは、野球大国・米国を見渡しても負けないほどの施設。巨人も『TOKYO GIANTS TOWN』構想を発表している。

「巨人2軍もそうだが、人気球団にいるだけでチヤホヤする周囲の環境もある」

 在京スポーツ紙記者は人気球団の宿命と語る。

「例えば巨人ブランド絶対時は、2軍選手にもタニマチがいて遊ぶには困らなかった。球団全体としてそういう『甘え』構造を払拭しようとし、最近は切磋琢磨で若手がどんどん1軍にも上がってくるようになった。阪神も同様の環境にある。伝統球団として阪神選手でいることがステータスになっている。グラウンド外で聞こえてくるトラブルも多い。もちろん一流になるためには自分を律することが求められる。しかし20代の若者がどこまでできるのか。周囲がしっかりケアしてあげることが大事なはず」

 藤浪晋太郎が新型コロナウイルスに感染したとされる合コンには伊藤も同席していた。10年近くプロの世界に身を置き、結果が出ないのにこういう状況である。『大人』である大卒入団選手がそうなら、『子供』の高卒新人にどういった影響が及ぶのか。若手伸び悩みの問題は果たしてそこにあるのか……。

「30歳を『おっさん』と考えるか、『ヤング』と考えるか。伊藤も高山も良いものは間違いなく持ってる。まだまだ期待してる」(阪神OB)

 周囲は厳しいことを言うが見放してはいない。それだけ素晴らしい素材であり可能性も残されているはず。

「日本一」と言う夢を語るなら、まずは足元から固めることであり、若手の育成と成長は欠かせない。その中には2人も含まれている。伊藤31歳、高山27歳、まだまだ『ヤング』なのだから。

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