「TikTokと同時に大統領令で使用禁止を突き付けられた中国アプリ『微信(ウィーチャット)』は、中国政府が通信内容を検閲しているといわれています。実際に、天安門事件の追悼集会の写真を投稿して、アカウントが一時ブロックされた記者もいました。ですが、TikTokには中国政府が介入している証拠がない。彼ら側からすると、トランプ大統領から、いちゃもんを付けられたというところでしょう」

 と三上さんは指摘する。

■買収額は数兆円規模

 前述の米国法人CEOに就任したばかりのメイヤー氏も、わずか3カ月足らずの8月下旬に辞任。米政府の厳格な対応などが影響しているといわれている。

 ひとつの人気アプリがきっかけで、国をも巻き込んでの大ごとに発展したが、その買収額は数兆円規模とも報じられている。世界戦略という歩みを止めたくないはずだが、野望の見直しは避けられない。

 日本にはどのような影響を与えるのか。前出のバイトダンス日本法人広報担当者は、本誌の取材に「日本の運営は現状変わらず行ってまいります」と明らかにしたが、三上さんは今後をこう分析している。

「米国でどんな買収が繰り広げられるかによって、今後の日本での展開は変わってくるでしょう。完全に売却した場合、著作権の問題で、日本ではTikTokというアプリ名やサービス内容が使えなくなる可能性があります。売却が一部、または売却しなかった場合、米国企業が運営するグーグルプレイやアップストアから、ダウンロードできなくなることもありえるでしょう」

(ライター・井上有紀子)

AERA 2020年9月21日号

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