若年層から支持を得るTikTokは、「買収」など米国の動き次第で、日本でも影響を受ける可能性がある。はたしてどちらに転ぶのか(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
若年層から支持を得るTikTokは、「買収」など米国の動き次第で、日本でも影響を受ける可能性がある。はたしてどちらに転ぶのか(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)
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AERA 2020年9月21日号より
AERA 2020年9月21日号より

 ダンス動画などで10代を中心に世界中で人気のアプリ「TikTok」に、政治家たちが注目し始めた。国をあげてのさまざまな目論見に、交渉ばかりが踊る。米国事業の買収にオラクルの名前もあがったが、今後、はたしてどうなるのか。

【図を見る】TikTokは世界でこんなにダウンロードされていた!

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 テンポよく切り替わる動画が人気のアプリをめぐり、世界の動きがどうも鈍い。

 日本でも若者を中心に広く使われている中国産の動画共有アプリ「TikTok(ティックトック)」を排除する動きが、米国内で進められている。米トランプ政権は8月14日、開発・運営元の中国企業バイトダンスに、TikTokの米国事業を売却するよう正式に命じた。

 トランプ大統領の逆鱗に触れた理由──それは、ユーザー情報の流出という懸念だ。大統領選挙を前に、「利用者のデータが中国政府に渡りかねない」「安全保障上の問題がある」などと主張し、米国でTikTokを実質的に使用禁止にする大統領令を発出するに至った。

 売却の交渉には米マイクロソフトや米ウォルマート、米ツイッターなど大手企業が動きを示すなど、買い手は複数挙がった。

 これには、TikTok側も黙ってはいない。

 8月24日、バイトダンスとTikTokの米国法人が、「表現の自由を侵害している」などと米政府を相手に提訴。また中国政府も、AI(人工知能)や音声認識などの技術を中国から海外に移す場合は政府の承認を必要とする輸出規制強化を打ち出し、TikTokがこれに当たると見られたことで、米国内の売却交渉は大きくずれ込むともいわれている。

■インドでも利用禁止に

 さながら米中殴り合いのけんかのようだが、これに先立ち、6月にはインド政府もTikTokをはじめとする50種類以上の中国製アプリの利用を禁じていた。インド国内でも大人気だったが、政府は国民のプライバシーについての情報が国外に持ち出されているなどと主張。その動向が注視されていた。

 米調査会社によれば、TikTokアプリのダウンロード数は世界で20億回を突破。近年、段違いの成長を見せ、日本でもその影響力は計り知れない。

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