ファシアの動きが悪くなるのは、同じ姿勢を長時間続けることでファシアと筋肉が癒着してしまうことが主な原因だ。たとえ良い姿勢でも、長時間動かないでいると癒着が起きる。これを防ぐには、30分に1回を目安として、筋肉が固まらないうちにまめに動く習慣が不可欠だと遠藤さんは言う。

「そのためには人目を気にせず、姿勢や座る位置を頻繁に変えたり、運動したりできる在宅勤務のほうが融通の利く環境といえます」

 遠藤さんの話を元に、テレワークで整えたい環境や気を付けるべき点をまとめた。特集では、自分でできるマッサージやエクササイズを紹介しているので、特に在宅ワークの人は人目を気にせず、30分ごとに自分に合ったエクササイズなどを採り入れてほしい。

■脱背の基本姿勢意識

 もちろん、筋肉そのものを無視するわけにはいかない。人類の進化の過程をもとに、肩こりを防ぐ「良い姿勢」を教えてくれるのは、早稲田大学スポーツ科学学術院教授で整形外科医の金岡恒治さん(58)だ。

 人類は二足歩行への進化の過程で肩甲骨が後ろに反り返った。だが加齢とともに筋肉が衰えたり、スマホ操作などで前かがみの姿勢を取り続けたりすることで、肩甲骨が前にせり出した前傾姿勢、いわゆる猫背の状態になってしまう。その結果、上部僧帽筋(じょうぶそうぼうきん)、肩甲挙筋(けんこうきょきん)、脊柱起立筋(せきちゅうきりつきん)といった首、肩周りや腰の筋肉に負担がかかり、肩こりや腰痛を発症してしまうのだという。

 これを防ぐため、金岡さんが勧めるのが「あごを引く」「左右の肩甲骨を寄せる」「腹を引き込む」の三つがそろった姿勢だ。この姿勢を取ることで、肩甲骨の内側で左右の肩甲骨を引き寄せる菱形筋(りょうけいきん)や体幹の腹横筋がうまく機能し、周りの筋肉の負担を減らせるという。もちろん、ずっとこの姿勢を保ち続ける必要はなく、生活の中で意識して取るべき基本姿勢と捉えればいい。(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年9月21日号より抜粋

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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