人の頭の重さは体重の約10%。体重60キロの人だと約6キロで、スイカ一つよりやや重い。さらに、前かがみの姿勢になると頸部(首)への負荷は一気に増す。例えば、30度の前かがみ姿勢になると約3倍、18キロの負担が首にのしかかる。このため、パソコンのモニターを長時間見るといったデスクワークでは首や肩周りの筋肉に大きな負担がかかってしまうのだ。

■「ファシア」がカギ握る

 実は近年の研究で、肩こりのより詳細なメカニズムが明らかになってきたという。

「最新の知見で、肩こりの原因として今まで関心を集めてこなかった組織が重要な役割を果たしていることがわかりました」

 遠藤さんがそう話す組織が、筋肉を包みクッションの役割をする「ファシア(筋膜)」だ。

 ファシアはコラーゲンを多く含み、立体的な網目構造をしている。骨や神経、血管、臓器の間などにあるが、ここでは皮膚や皮下脂肪と筋肉の間にあるファシアに注目していこう。ミカンでいえば、皮が皮膚や皮下脂肪、実が筋肉で、その間にある白い部分がファシアと思えばよい、と遠藤さんは解説する。

「ファシアが硬くなると、皮が実にくっついてむきづらくなる、つまり体を動かしづらくなる。これが肩こりです」

 本来ファシアは、皮下脂肪と筋肉の間が滑らかにすべるようにする役割がある。だがファシアが硬くなり、筋肉と皮下組織のすべりが悪くなってしまうと違和感を覚えたり、ほかの筋肉が引っ張られたりしてしまう。筋肉自体の状態とは別に、これが肩こりの大きな原因なのだ。

 それでは早速、あなたのファシアがどんな状態かを確認してみよう。セルフチェックをしてみてほしい。腕が60度未満しか上がらなかった人はファシアのすべりが悪くなっているので、「肩甲骨はがし」ですべりをよくしよう。つらいからと強くもんだり叩いたりするのは禁物だ。

「ファシアが傷つくと、硬化してしこりになる場合があります。そうなると、肩こりが治りづらくなります」(遠藤さん)

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