在宅勤務者の9割超が悩まされている肩こり。一度解消してもまたぶり返す厄介者だ。だが、最新の知見を生かせば根治は夢ではない。カギは「ファシア」と新しい働き方にある。AERA 2020年9月21日号は「さらば肩こり」を特集。
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肩がだるい、重い。もんでも回しても楽にならない。パソコンに向かうのが憂鬱だ──。一般社団法人姿勢サイエンス協会のアンケートでは、コロナ禍の中、9割超のテレワーカーが肩こりなどに悩んでいるという。
思い当たる節はある。ダイニングテーブルでの慣れない作業。会議や取材もオンラインになり、パソコンやスマホに向かう時間が増えた。通勤で歩く時間が減り、間食が増えてコロナ太り。考えてみれば、全ては肩こりにつながる生活スタイルに陥っていたのではないか。
そもそもデスクワーカーに肩こりの悩みは付き物だ。肩が「凝る」と最初に表現したのは文豪・夏目漱石。明治43年に発表した小説『門』で「石のように凝っていた」とした。そんな国民病ともいわれる肩こりだが、医学的な病名ではないという。
■経済損失は年間3兆円
「肩こりは疾患ではないため、病院で『治療する』ものではありません。しかし、体の不調を伴うのは事実。医学的に適切な指導を受け、生活習慣を見直すことが必要です」
こう話す東京医科大学准教授の遠藤健司さん(57)は「肩こりをあなどってはいけません」と警鐘を鳴らす。
肩こりは放置すると脳に作用し、めまいや頭痛、不眠、全身の不調、自律神経障害、抑うつの原因になるという。東京大学と日本臓器製薬が2019年に実施した調査によると、「首周りの不調・肩こり」による労働生産性の低下を金額に換算した結果、経済損失は年間約3兆円に上るとの試算も出ている。
肩こりはマッサージなどで一時的に治まっても根本治療には至らない。今回アエラは、肩こりを根治し、二度と悩まされないための方策にたどり着いた。それにはまず肩こりのメカニズムを知る必要がある。