今年3月31日、賢所参拝のため皇居に入る愛子さま。中学校卒業にあたり記念文集に書いた作文のコピーは両陛下から中満泉さんに手渡された(写真:JMPA)
今年3月31日、賢所参拝のため皇居に入る愛子さま。中学校卒業にあたり記念文集に書いた作文のコピーは両陛下から中満泉さんに手渡された(写真:JMPA)
8月11日、赤坂御所で国連事務次長の中満泉さんから、核軍縮をめぐる安全保障環境の現状などについて説明を受ける天皇、皇后両陛下(写真:宮内庁提供)
8月11日、赤坂御所で国連事務次長の中満泉さんから、核軍縮をめぐる安全保障環境の現状などについて説明を受ける天皇、皇后両陛下(写真:宮内庁提供)

 新しい自民党総裁は、皇位継承問題でも安倍政権の姿勢を「継承」するのだろうか。天皇、皇后両陛下の「面会」「おことば」そして愛子さまの「作文」から見えてきたことがある。AERA 2020年9月21日号から。

【写真】1989年、英国留学中の雅子さま

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「今後とも」という言葉に感動したのは、生まれて初めてのことだったかもしれない。

 そもそも自分で使うのは、「今後とも、どうぞよろしくお願いします」くらいだ。メールの最後にお約束でつける、何も意味しない言葉。なのに「今後とも」に触発された。あれこれ考えた。初めての体験だった。

 それは令和になって2度目の全国戦没者追悼式。天皇陛下は「おことば」の中でこう語った。

「私たちは今、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、新たな苦難に直面していますが、私たち皆が手を共に携えて、この困難な状況を乗り越え、今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていくことを心から願います」

 そうか、皇室のバトンとはこのように引き継がれるのか。これは愛子さまにつながる道。それは男性であろうと女性であろうと関係ない。そう実感した8月15日だった。そこへ至る道を書いていく。

■平和希求する担い手は

 先ほど紹介した陛下のおことばは、昨年の全国戦没者追悼式にはなかった新たな一文だった。英国のエリザベス女王はじめ、各国王室が新型コロナウイルスに関して国民にメッセージを発してきたことなどと比較し、「沈黙」と報じられることもあった陛下。2月14日以来、6カ月ぶりの外出という機会をとらえ、コロナ禍への思いを織り込んだ。国民へ語りかけたい。その切実な思いが伝わってきた。

 そこで使われた「今後とも」。文章を因数分解するなら、「今後とも、人々の幸せと平和を希求し続けていく」担い手は、「私たち皆」になる。だが、ここでの陛下の力点は「私たち」に置かれ、それは「ご自身」「雅子さま」「愛子さま」ではないか。そのように思え、勝手に感動した。

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矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

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