森下典子(もりした・のりこ)/1956年、神奈川県生まれ。エッセイスト。日本女子大学文学部卒。2002年に刊行した『日日是好日』はロングセラーとなり、18年に映画化された。著書に『好日日記』『前世への冒険』『いとしいたべもの』など(撮影/写真部・張 溢文)
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 AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。「書店員さんオススメの一冊」では、売り場を預かる各書店の担当者がイチオシの作品を挙げています。

【写真】映画「日日是好日」でお茶の師匠を演じた樹木希林さん

『日日是好日』で知られるエッセイストの森下典子さんが、新著『好日絵巻 季節のめぐり、茶室のいろどり』を刊行した。茶室の中で出会う季節の花々、道具や和菓子を著者自身が描き文章を寄せた、まさに「絵巻」というべき一冊だ。著者の森下さんに、同著に込めた思いを聞いた。

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 映画化もされた森下典子さん(64)の『日日是好日(にちにちこれこうじつ)』は、茶道を習っている、いないを問わず、多くの読者を得た稀有(けう)な本となった。

 本書『好日絵巻(えまき)』は『日日是好日』『好日日記(にっき)』に続く、茶道をテーマにしたシリーズの3作目。累計で70万部を突破している人気シリーズだが、本書も刊行から2カ月で3刷になっている。

 前作『好日日記』の本文に添えられた森下さんのイラストがチャーミングで印象的だったが、本書のクレジットはさらに踏み込んで「絵と文 森下典子」とある。絵の比重が大きくなっているのだ。

「『日日是好日』から、ずっと装丁をしてくれている鈴木成一さんが私の絵を見て、『森下さんの“好き”が伝わってきますね』と言ってくれて、とても嬉しかった。自分が良いなと思ったものについて『素敵だから、見て』と伝えたくて、絵を描いているので」

 子どもの頃から絵を描くのが好きで「スケッチブックとクレヨンがあれば、何時間でも描いていられた」という、森下さん。

 数年前、エッセーと一緒に絵を描くことを提案され、あらためて絵筆をとることに。画材は和紙と顔彩だ。

 本書は一年のはじまりである「初釜」から季節を追って、タイトルにある「絵巻」のように進んでいく。春夏秋冬、それぞれの季節の茶花や道具、和菓子をいとおしそうに、森下さんは描く。独学だそうだが、森下さんの絵が繊細で素晴らしいのだ。

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