武田:「理路整然とした偶発性」って、矛盾するけどおもしろいですね。

上出:仕組まれたものは大嫌いじゃないですか。

武田:特にテレビに対して厳しくなっていますよね。だけど、ドッキリ番組はなくならないですよね。たとえば「モニタリング」がなぜウケるのか。

上出:人を驚かせることは、人間が根源的に持っている欲求でもあるから。

武田:でも、「催眠術をかけると、目の前にいる妻が人気女優の誰それに見える」みたいな定番のドッキリがあるじゃないですか。見ていて「ウソつけ」と思いますよね。その最初の感情をなぜ捨ててしまうのか。それはそちら(作り手側)が考えることじゃないかもしれませんが、そこを疑うことがまさに「視聴者がなめられない」ことにつながると思うんですよ。

上出:演技だとわかりながら楽しんでいる人とすっかり信じ込んでいる人と二種類いると思いますし、はっきりと分かれるものでもないと思いますけどね。

武田:テレビ業界的な感性に支配されることに抗いたいんです。最近は、テレビについてモノを書く人がやたらとテレビの内側にアクセスしていて、誰と誰が仲がよくてだからこういうビビッドな番組が生まれたとかって書くんだけど、それってどうでもいいんですよね、本当は。

上出:なるほど。

武田:2001年に亡くなったコラムニストのナンシー関さんのことが大好きなんですが、ナンシーさんのコラムがなぜ今も面白く読めるかというと、制作現場のことなんてどうでもよくて、ブラウン管から伝わってきたことを批評していたからです。その感覚を少しは取り戻さないと、と思っています。だって、人気芸人にいちばん詳しいのはその芸人のマネージャーや近しいスタッフなわけだから、書く側はいつまでも彼らより詳しくはない。でも、その芸人の番組を見て感じた面白さや違和感は、個人が占有してもいいわけじゃないですか。そっちにいかないと、視聴者はどんどんテレビ業界的なものにあやつられます。なんか、そこに逆らいたいんですよね。(構成/長瀬千雅)

※「いよいよこのわかりやすさ至上主義、きつくないですか?」へつづく

■武田砂鉄(たけだ・さてつ)
1982年、東京都生まれ。出版社勤務を経て、2014年からフリーライターに。新聞への寄稿や、週刊誌、文芸誌、ファッション誌など幅広いメディアで連載を多数執筆するほか、ラジオ番組のパーソナリティとしても活躍。9月28日スタートの新番組『アシタノカレッジ』(TBSラジオ、月~金、22時~)の金曜パーソナリティを務める。

■上出遼平(かみで・りょうへい)
1989年、東京都生まれ。2011年株式会社テレビ東京に入社。『ハイパーハードボイルドグルメリポート』シリーズの企画、演出、撮影、編集まで番組制作の全課程を担う。空いた時間は山歩き。

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