ノーベル賞の前哨戦と言われているラスカー賞を受賞しているのは、森和俊。彼は、細胞内でタンパク質が合成される際、その品質管理を司っている重要な分子メカニズムを解明した。米国のライバル、ピーター・ウォルターと壮絶な研究競争を行った末の成果であり、もし受賞するとすれば共同受賞となるだろう。
■発表は10月5日から
免疫反応のブレーキ役となる制御性T細胞を発見した坂口志文も候補者のひとり。それから長年、候補者に擬せられているのは、カドヘリンの発見者、竹市雅俊である。
カドヘリンとは、細胞接着分子と呼ばれるもので、もともとバラバラにしたヒトデの細胞が仲間同士で再接着することに注目して、その目印となる分子として発見された。今では多細胞生物の組織化に欠かせない重要分子としてどの教科書にも記載されている。
この3人は、いずれも京大関係者(学歴もしくは在職歴がある)。やはり「ノーベル賞に京大強し」である。
高コレステロール症薬スタチンを発見した遠藤章もずっとノーベル賞候補者と言われ続けてきた。この発見から派生した薬品が、現在、全世界で広く使われていることを考えれば、彼もいつ受賞してもおかしくない。
発表は、医学生理学賞が10月5日、物理学賞が6日、化学賞が7日である。楽しみに待つことにしたい。
○福岡伸一(ふくおか・しんいち)/生物学者。青山学院大学教授、米国ロックフェラー大学客員教授。1959年東京都生まれ。京都大学卒。米国ハーバード大学医学部研究員、京都大学助教授を経て現職。著書『生物と無生物のあいだ』はサントリー学芸賞を受賞。『動的平衡』『ナチュラリスト―生命を愛でる人―』『フェルメール 隠された次元』、訳書『ドリトル先生航海記』ほか。
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