しかし後日、登記簿謄本を取得した清水さんは唖然とする。ローンの関係で、当初は夫と義父の名義で購入したはずの自宅が、夫と義姉妹の名義に変更されていたのだ。
どうやら、義両親が亡くなった後の相続で、夫はすべての手続きを義姉妹たちに任せっきりにしていたため、名義変更を承諾してしまっていたようだ。これでは義姉妹に了承を得ないと自宅を売却することはできない。
清水さんは義姉妹に電話で相談したが、「どうせ治療したって長くはもたないんだから、家を売るのは反対」と冷たくあしらわれてしまう。
途方に暮れる清水さんだったが、災難はこれだけでは終わらなかった。
ある日、清水さんが仕事から帰宅すると、自宅の窓ガラスが割られていた。夫は入院しているため、家には誰もいないはずだ。恐る恐る中に入ると、家中が泥棒に入られた後のように荒らされており、特に仏壇の周辺がひどい有様だった。
それから数日後、自宅の売却の件で何とか義姉妹と話し合う機会を設けることができ、清水さんは夫の古い友人とともに自宅で面会することになる。
話し合いが始まるも、次第に激しい口論となった。挙句の果てには、激昂した義妹の夫が、清水さんの夫の友人に手をあげ、友人はけがを負ってしまう。そして義姉は、「こないだ家を調べさせてもらったけど、うちの両親が遺した財産をどこに隠してるの?」と言い、清水さんに疑いの目を向けてきた。清水さんは、あの日の不法侵入者は義姉たちだったのだと確信。結局話し合いはまとまらず、何も進展しないまま散会となった。
清水さんの実の両親はすでに他界しているため、弟と妹に相談し、夫の治療費を工面するほかなかった。
一方、夫のがんは進行し、複数箇所への転移が発覚。みるみる弱っていく夫を見ると、「これ以上心配事を増やしてはいけない」と思えて、自宅の売却のことを相談することははばかられた。ただ、以前から「私ひとりになったら家を出るからね」と夫には話をしており、夫も「申し訳ない。きみはよくやってくれた」と口にしていた。