そして19年、約5年の闘病の末に夫が亡くなる。68歳だった。
■新しい人生のスタート
清水さんの夫の葬儀は、義姉妹たちには知らせずにひっそりとおこなわれた。清水さんの夫の友人たちは皆、葬儀に夫の親族がいないことを知ると安堵の表情を浮かべた。
最愛の夫をうしなった涙も乾かないうちに、清水さんは、かねてから知り合いだった生前整理診断士の橋本さんと司法書士のサポートのもと、急いで自宅の相続放棄や姻族関係終了届などの手続きを済ませる。なぜなら、清水さんは義姉妹たちとはもう二度と関わりたくないと思っていたからだ。
清水さんはその後、義姉妹たちに居所を知られないように引っ越し、新しい生活をスタートした。
それでも清水さんは、「いつまた義姉妹たちが不法侵入してくるか、不安と恐怖に飲み込まれそうになることがある」という。そんなときは、橋本さんと司法書士が、「私たちが窓口になって守るから心配しないで」「これまで清水さん夫婦が助けてきた人たちも応援しているよ」と励ました。
本来であれば、妻である清水さんは、夫が亡くなった後も自宅を追われることはないし、自宅を売却することができれば500万円にはなった。それでも、身の危険を感じた清水さんは、お金よりも、安心して暮らせる生活を選択。司法書士からは、「自宅の中にある家電や家具、夫が亡くなる前の生活費も相続財産になります。相続放棄をすると、他の相続人から返却を求められるかもしれませんが、覚悟してください」と説明を受けた。
夫が遺してくれたのは遺骨のみ。ただし、遺骨でさえも、相続人から返却要求があれば応じなければならない。だが、清水さんの夫が生前、「遺骨は野田山墓地に納めてほしい」と話していたことから、橋本さんが代理で義姉妹たちにお願いしに行こうと考えている。
現在清水さんは、複数の仕事をかけ持ちしてなんとか暮らしている。いったいどうすれば、清水さんは家を追われずに済んだのだろうか。