大切な人のために、「生前整理」は大切な取り組みだ※写真はイメージです(Gettyimages)
大切な人のために、「生前整理」は大切な取り組みだ※写真はイメージです(Gettyimages)

 人生で最も費用対効果が高い節約術は、「生前整理」かもしれない。生前整理とは、生きているうちに自分の死や老いに備え、不用品を整理したり、資産状況などを把握し、自分の意志がハッキリしているうちに、大切な人に思いを伝えたりしておくこと。

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 石川県の清水美和子さん(65歳、仮名)は、夫婦で生前整理をしなかったために、夫を胃がんで亡くしてから、住み慣れた家を夫の親族たちによって追い出されてしまう……。

 清水さんをサポートしている生前整理診断士の橋本敦子さんに、生前整理が大切な家族をいかに守ることになるのかを聞いた。

■老舗呉服店の長男との結婚生活

 清水さんと夫は20代後半のころ、友人の紹介で知り合い、交際を始めた。ところが夫の両親は、「金沢のしきたりを知らないよそ者なんて!」と、2人が付き合うことに猛反対。夫は金沢に代々伝わる老舗呉服店の長男だったため、他県出身で普通の家庭育ちの清水さんのことが気に入らなかったのだ。

 当然、結婚も反対されたが、夫は両親の反対を押し切り1983年に2人で住む新居を購入。新婚生活を始める。

 清水さん夫婦は、困っている人を見ると放っておけない世話好きの似たもの夫婦だった。近所の高齢者のサポートや、家庭の事情で子育てできない夫婦の子どもを預かるなどし、近所でも「心優しいおしどり夫婦」と評判だった。

 仲の良い2人だったが、結婚後は義両親だけでなく、夫の姉と2人の妹も清水さんを「嫁」とは認めず、ことあるごとに清水さんにつらく当たった。なかなか子どもに恵まれないことから、「跡継ぎを生めない嫁なんて認められない」「だから反対だったのよ」と、長年心無い言葉を浴びせてきた。

 清水さんの夫は、家業を継がなかった。「いくら歴史ある老舗の呉服店でも、これからは呉服だけでやっていくのは難しい」と考えたからだ。

 時はバブル時代の末期。バブル崩壊とともに着物職人が激減し、呉服店の経営が傾き始める。義両親は、清水さん夫婦に何度も資金援助を求めてきたが、2人は嫌な顔ひとつせず、必要なお金を工面して渡した。

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旦木瑞穂

旦木瑞穂

プロフィール:旦木瑞穂(たんぎ みずほ)/愛知県出身。グラフィックデザイナー、アートディレクターを経て2015年に独立。葬儀・お墓・ダブルケア/シングル介護・PMS/PMDDに関する執筆のほか、紙媒体の企画編集・デザイン、イラスト制作を行う。

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「嫁と認めないなんて言ってごめんなさい」