もう一つのトランプ氏の問題発言は以下だ。

「何カ月も(大統領選挙の)結果が判明しないかもしれない。なぜなら投票用紙があちこちに散らばっているからだ……詐欺だし、恥ずべきことだ……八百長の選挙だからだ」

■投票の再集計を意図か

 この「何カ月」という部分に米メディアが反応した。トランプ氏は、新型コロナウイルスの感染を恐れる有権者が行う郵便投票の用紙を民主党がだまし取ると繰り返し主張している。米メディアは、11月3日の投開票日の結果でたとえ大敗しても、トランプ氏が激戦州で投票用紙の再集計を実施させる意図があると捉えた。

 米大統領選は近年、大半が投票締め切りから数時間後の開票結果に基づき、メディアが「当確」を打ち、敗北した候補者は、敗北を認める演説をするのが常だった。それが今年は実現しない可能性が浮上してきた。

 犯罪や国家安全保障の専門家らは一斉に、投開票日の投票所の安全と、投開票日後の暴動を含む治安の悪化を懸念する発言を始めた。

 八百長選挙というトランプ氏のメッセージを受けたトランプ支持者や右派グループが自主的に投票所の「監視」を行う可能性が出てきたためだ。投票所ごとに配置された公式な共和・民主党の監視員とは別の市民であり、特に銃の持ち歩きが許されている州で、銃器を持ち込んでくるのは容易に予測できる。「監視」だけにとどまらず、銃保有の反対派や、白人以外のマイノリティーに対し、投票妨害さえ起こしかねない。

 各地の警察は、すでに投開票日後の選挙結果をめぐる右派と左派の対立や暴動に備え、警官の訓練などを進めている。しかし、投開票日当日の投票所の警備は予定されていなかった。(ジャーナリスト・津山恵子(ニューヨーク))

AERA 2020年10月12日号より抜粋

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