11月の米大統領選に向けた、共和党のトランプ大統領(左)と民主党のバイデン前副大統領による1回目のテレビ討論会/9月29日、米オハイオ州クリーブランド(写真:Morry Gash-Pool/gettyimages)
11月の米大統領選に向けた、共和党のトランプ大統領(左)と民主党のバイデン前副大統領による1回目のテレビ討論会/9月29日、米オハイオ州クリーブランド(写真:Morry Gash-Pool/gettyimages)
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 米大統領候補の第1回テレビ討論会の評価は低調だ。さらにトランプ大統領に新型コロナ陽性反応が出た。投開票日を含め、米国内は混乱に陥る可能性もある。AERA 2020年10月12日号では、前代未聞となったテレビ討論会を取り上げた。

【写真】トランプ氏を「道化師」「うそつき」と言い返したバイデン氏

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「こんなに暗い時代なのに、米国にとってなんという無駄だ」

 政治ジャーナリスト、エロール・ルイス氏はニューヨークのニュース専門局「NY1」に出演し、こう嘆いた。9月29日に開かれた大統領候補によるテレビ討論会を見た直後だ。

 90分にわたる討論会は、最初のわずか10分で異常さを帯びた。共和党候補のトランプ大統領が、民主党候補のジョー・バイデン前副大統領を「ジョー」と呼び捨てにし、バイデン氏の発言中も割り込んだためだ。トランプ支持者に「大統領らしい」と思わせる強い態度を貫く戦略であることは、明らかだった。

 バイデン氏は、政治家として失言があることで有名で、予備選挙の討論会では攻撃されると言葉が出てこなくなる場面が目立ったのが懸念材料だった。しかし、失言や吃音(きつおん)はなかったものの、トランプ氏の攻撃に対し、「道化師」「うそつき」と、現職大統領に言い返し、「泥仕合」となった。

 つまり、本来は政策の違いなどを有権者に訴えるための討論会が、「言い合い」に終わってしまった。「討論」が不可能な状況をトランプ氏が作ったのは明らかだった。

■「くそったれショー」

 米国人は、これをどう見たのか。トランプ氏の「討論」での振る舞いを表す言葉は「いじめ」「子どもっぽい」「無礼」と厳しい。バイデン氏については「弱々しい」「大統領らしい」「かわいそう」と反応は分かれた。討論会全体については「大混乱」「くそったれショー(転じて最低の出来事)」などの言葉が挙がった。政治ニュース専門サイト「アクシオス」と調査会社サーベイモンキーが討論会後に、米成人2618人に対して行った調査結果だ。

 トランプ氏の言動が期待より悪かったと答えた人が39%だったのに対し、バイデン氏は13%。また、37%の民主党員が怒って途中で討論会を見るのをやめたと答えた。無党派層では24%だったが、共和党員は9%にとどまった。トランプ氏の常軌を逸した言動にかかわらず、共和党員の多くが最後まで討論会を見たことが分かる。

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