■白人至上主義を拒まず
米メディアは、混乱ぶりをこき下ろした。
「民主党員も共和党員も、それぞれの候補が勝つと納得できる内容ではなかった。あと2回ある討論会を多くの米国人が熱心に見るとは信じがたい」(アクシオス)
「トランプの妨害が1回目の討論を混乱に」(米紙ニューヨーク・タイムズ1面)
「ひどい!」(保守系タブロイド紙ニューヨーク・ポスト1面)
その上、内容が前代未聞だったにもかかわらず、トランプ氏の二つの発言が、全米の市民や選挙関係者、警察などに不安と恐怖を引き起こした。第1に白人至上主義を否定しなかったことと、第2にトランプ氏が敗北したとしても選挙結果を受け入れないと表明したことだ。以下はそのやりとりだ。
司会者「(極右の)白人至上主義者と武装グループを批判するお気持ちはありますか」
トランプ氏「私が見る限りほぼ全ての(暴力)行為は、左派からだ。右派からではない。私に誰を非難しろというんだ」
バイデン氏「プラウド・ボーイズ(注:米国で最もよく知られた、ヘイトグループ)では」
トランプ氏「プラウド・ボーイズ、一歩下がって、待機せよ。なぜなら誰かがアンティファ(注:反ファシズムのグループ)など左派に対抗しないといけないからだ」
プラウド・ボーイズは2016年創立の「西部の熱狂的愛国主義者」を自称する男性組織。米名誉毀損防止同盟(ADL)によると、女性・イスラム教徒・移民・LGBTへの差別を容認する。関係者は性的暴行を支持し、暴力犯罪で有罪判決を受けたメンバーもいる。
プラウド・ボーイズや一部のトランプ支持者は、「下がって、待機せよ」というトランプ氏の発言がグループへの支持を示したものだと捉えた。アクシオスによると、プラウド・ボーイズ幹部のジョー・ビッグズ氏は、保守系ブログにこう書いた。
「トランプ大統領は、誰かが左派グループ、アンティファに対応しなければならないため、プラウド・ボーイズに待機せよと命令した……はい、サー! 私たちは準備ができています。トランプ氏は基本的に彼らを消せと命令した。うれしくてなりません」