高齢者に限らずだが、自粛生活で酒の一人飲みが増えるため、飲酒量のコントロールが利かなくなりアルコール依存症にもなりやすいという。
「みんなでしゃべったり会食したりすることを避けろというメッセージや、ウィズコロナの新しい生活様式なるものは、うつ病の人にはとても悪い。薬に副作用があるように感染症対策にも副作用はあるはず。国も感染症の専門家も負の部分の説明を全然しないのは大問題です」(和田氏)
持病の悪化や突然死、自殺が増えるということは、一人暮らしの人たちの「孤独死」に直結する。
孤独死の現場の清掃や原状回復工事などを行う東京・八王子の「武蔵シンクタンク」の塩田卓也社長によれば、以前は孤独死で見つかるのは50代後半から60歳くらいまでが8割を占め、30代や40代も珍しくなかったという。65歳以上の高齢者はむしろ、地域包括支援センターの見守り活動や、訪問介護などで生存が確認されるので少なかった。
ところがコロナ禍の今年は、高齢者が急激に増えたという。
「近隣の住民も含め見守り態勢が崩壊したことが要因だと考えられます。通常、孤独死は1、2週間後に遺体が見つかるものですが、いまは3、4カ月後が当たり前になっています。都内にはまだまだ見つかっていない人がたくさんおられるはずです」(塩田氏)
これまであった見守り態勢などのセーフティーネットが崩れたり、休業や失業で医療機関にかかれなくなっている人が増えたりと、コロナ禍の前とは違う状況になっている。前出の内科医がこう指摘する。
「医療費の3割負担は変わらないわけです。生活に困った方々の医療費を短期的にタダにするなど、国が弾力的な政策を打ち出さないと死ななくてもいい人が死んでしまいます。生活保護を、数カ月間だけ受けて、お金が回ってきたらやめるというふうに上手に利用するのも手だと思いますが、役所はそんなに親切に誘導してくれません」
Go Toキャンペーンの1兆数千億円の予算の何割かでも、医者にかかれない人や、発見が早ければ助かっていた、という人を守るために使えないものだろうか。
◇相談窓口
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(本誌・亀井洋志)
※週刊朝日 2020年10月16日号