対策として“うがい”を提案するのは山本部長。
「インフルエンザウイルスが増殖する際、『ノイラミニダーゼ』という酵素が必要になります。この酵素は歯周病菌が作り出し、口腔内や咽頭(いんとう)の粘膜に多く存在するので、こまめにうがいをすることでこの酵素を減らせます。手洗いをするときに一緒にするとよいでしょう」
うがいは、うがい薬を使わず、水道水で。うがい薬に含まれている成分が粘膜を傷つけてしまうことがあるためだ。
予防といえば、新型コロナのワクチンの状況も気になる。政府は全国民に行き渡る量のワクチンの確保を目指し、国内外の製薬会社と基本合意を済ませた。最終段階の臨床試験を実施しているワクチン候補は、米・ファイザー社や英・アストラゼネカ社などの10種類ほど。
WHOは、年末までにワクチンが準備できる見込みを示したが、岡部所長は、「世界レベルでのワクチンの確保は来年後半になるだろう」と慎重な姿勢を見せる。
「しかも、これは臨床試験が適切に進んで、結果が順調だった場合の話。ワクチンが早期に使えるようになることは望ましいですが、焦らないほうがいい。どんなワクチンも割合は低くても副反応は起こります。あとで不備が見つかって信頼が揺らげば、ワクチン接種をちゅうちょする人たちも出てきます」
(本誌・山内リカ、亀井洋志)
※週刊朝日 2020年10月23日号より抜粋