「戸籍を変えて幸せになった人もたくさんいます。でも、戸籍変更のための法律は心身ともに負担が大きいと思っています。性別適合手術の場合、体への負担が大きく、アフターケアも大変。僕自身、生殖器を取ったことで、子孫を残せないし、更年期障害の症状もある。戸籍変更後も、ホルモン療法を継続するために資金が必要です。若い人が戸籍変更する事も多いですが、変更後の人生の方が長いんですよね」
浅沼さんは手術をしたことに後悔の気持ちがあるからこそ、次世代の当事者たちには、同じ思いをさせたくないと願う。映画の出演者からも、「自分と同じような境遇にある人を助けたい」という思いを感じたという。
■一緒に協力してほしい
トランスジェンダーは日常的に傷つけられることが多い。たとえば、書類の性別欄。見た目と戸籍の性別が一致しない場合、どちらに〇をしても、トランスであることを強制的に告白しなくてはならないことがある。見た目で差別や偏見を受けることもあるし、ネット上ではトランスヘイトが広がっている。差別や偏見を受け、孤独感が増し、自ら死を選ぶ人も少なくない。
「この映画を通して、当事者の人には、他にもがんばっている人がいるから、自分らしく胸を張って生きてほしいとエールを送りたい。同時に、当事者でない人にも、僕たちが何に困っているのか、日本の法制度を含めどんな問題があるのかを知ってほしい。そして、一緒に変えていくために協力をしてほしいんです」
(編集部・大川恵実)
※AERA 2020年10月26日号