とはいえ、韓国にとって日本が大きな市場であることは間違いない。松谷氏によれば、K‐POP産業の輸出額のうち日本が3分の2を占める。

「K‐POPが本格的に日本進出したのは00年代に入ってから。BoAや東方神起が日本でブレークして徐々に浸透していきました。そして10年前後に、KARAや少女時代がやってきて完全に定着しました」

 その後、BTSらが登場し、日本でのK‐POPは勢いを拡大していく。そしてたどり着いたのが今の日本人プロデュースの流れだと指摘するのはK‐POPライターの酒井美絵子氏だ。

「KARAらのころから、『韓国から来たものだからいい』という空気感ができた。BTS人気の爆発で日本でのK‐POPの認知度は確固たるものになり、もはやグループを売り出すだけではなく育成システムを売る段階にまで来ている。それがNiziUやJO1です。今、韓国の事務所は日本人を始め、アジア人を多く抱えています。BTSが所属するビッグヒットエンターテインメントにも日本人の練習生がいます。今後、事務所が日本人グループを作って輸出するという流れができると思います」

 今月6日にはJYPの代表であるパク・ジニョン氏が朝の情報番組に出演し、男性版NiziUの構想を明かして話題を呼んだ。酒井氏はJO1も含めて、日本での男性グループに期待する。

「新型コロナの影響もあって、韓国のグループが来られない今、うっぷんがたまっている日本のK‐POPファンの受け皿になると思います」

 沢田氏はこう苦言を呈する。

「もはやK‐POPは世界でクールと受け入れられています。そのイメージだけを求めるのではなく、厳しいトレーニングでパフォーマンスを追求しなければ韓国には追いつけないと思います」

“日本版K‐POP”の行方から目が離せない。(本誌・秦正理)

週刊朝日  2020年10月30日号

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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