そう話すのは全日本指定自動車教習所協会連合会(全指連)の内山直人さん。新型コロナ感染拡大による緊急事態宣言時には、教習所も軒並み休業。その間に受検・受講できなかった人たちが宣言解除後に再度予約を入れたため、混雑ぶりに拍車がかかった。
また、現在は全国に約1250の教習所があるが、少子化や若者の車離れの影響で、この10年で約82校が閉校となったのも影響している。
警察庁は混雑緩和のため、認知機能検査を各都道府県警の免許更新センターで直接実施することで受検枠を拡大した。だが、25年にはすべての団塊世代が75歳以上となるため、対象者は増える一方。抜本的な解決には至っていない。
そんな中、6月に全国初の高齢者講習専用施設「はりま高齢者講習専門校」(兵庫県高砂市)が開校した。近隣にある播磨自動車教習所の関連施設で、約8500平方メートルの敷地に専用教習コースと2階建ての校舎を整備。校舎内はバリアフリーで滑りにくい床材を使うなど、高齢者に配慮している。年間3万人の受け入れが可能だ。
「教習所の繁忙期は、新規免許取得者の多い1~3月と7~8月。この間、高齢者講習を受け付けない教習所もあります。また、コースを走れる教習車数には上限があり、新規免許取得者と高齢者講習受講者双方を受け入れるには限界があります。高齢者講習の対象者は高齢化に伴ってさらに増加するため、専門校をつくりました」(同教習所所長・城谷輝美さん)
高齢者講習の委託料が教習所の収入になるが、人件費などを考えると十分とは言い難いという。新規免許取得者が減って経営が厳しい中、資金を投入して専用設備や指導員を整えるのは容易なことではない。10月に遠鉄自動車学校(静岡県浜松市)が「浜松自動車学校高齢者講習センター」を開設したが、同様の動きは全国的な広がりを見せてはいない。
はりま高齢者講習専門校ではコロナ対策で1日の受講人数を減らしているものの、基本的に申し込み翌日の検査・受講が可能。同県下で、なかなか予約が取れない神戸市や西宮市などの都市部からも受講者が訪れるという。