75歳以上で免許更新する時に避けて通れないのが、認知機能検査と高齢者講習。慢性的に予約待ちが続いている上に、新型コロナウイルスの影響で輪をかけて混雑している。なぜ予約が取れないのか? 講習ではどんな指導をしているのか? 現状を取材した。
【図解】75歳以上は何が違う?高齢者の免許更新までの流れはこちら
昨年4月に東京・池袋で乗用車が暴走し、母子が死亡したほか、10人が負傷した「池袋暴走事故」の初公判が10月8日に東京地裁で開かれた。乗用車を運転していた旧通産省工業技術院の元院長・飯塚幸三被告(89)は、手に黒い杖を持ち、車椅子で入廷した。
飯塚被告は罪状認否で謝罪しながらこう述べた。
「アクセルペダルを踏み続けたことはありません。車に何らかの異常が生じたために、暴走したと思っています」
起訴内容を否認して無罪を主張したことが大きな波紋を呼んでいるが、高齢ドライバーによる事故は、10年以上も前から社会問題化している。
「年齢層別免許保有者10万人当たり死亡事故件数の推移」(2019年、警察庁調べ)では、25~74歳は2~3件で推移しているのに対し、75~79歳は5件、80~84歳は9.14件、85歳以上は11.56件と、75歳以上から急に増加している。統計データのある09年から同様の傾向が続いている。
警察庁も長年、対策に取り組んでいる。1997年の道路交通法改正で75歳以上に高齢者講習を義務付け、運転免許証の自主返納制度を導入。現在、75歳以上の運転者には3年に1回の免許証更新時に認知機能検査の受検を義務化し、後日、その結果に応じた高齢者講習を行っている。
更新半年前に通知はがきが届いたら、まずは指定された自動車教習所に認知機能検査の予約を入れる。検査結果が出たら高齢者講習の予約を入れるのだが、これらの予約が2~3カ月待ちは当たり前の状態が続く。待ち日数は全国平均で84日、神奈川や愛知、秋田各県などでは100日を超える。
「教室やコースなどの設備や指導員数には限りがある上、コロナの影響で3密を防がなくてはならず、今まで以上に予約待ちを解消しづらいのが現状です」