AERAで連載中の「いま観るシネマ」では、毎週、数多く公開されている映画の中から、いま観ておくべき作品の舞台裏を監督や演者に直接インタビューして紹介。「もう1本 おすすめDVD」では、あわせて観て欲しい1本をセレクトしています。
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1960年代まで130年以上にわたりフランスの支配下にあり、90年代には長く内戦が続いた。北アフリカに位置するアルジェリアは、そんな複雑な歴史を持つ。「パピチャ 未来へのランウェイ」が描くのは、“暗黒の10年”と呼ばれる、イスラム原理主義が台頭した90年代のアルジェリアだ。
だが作品を観ると、何より登場人物たちが持つ明るさ、前向きなパワーに心奪われる。描かれるのは、激動の時代のなかで、夢を持ち、立ちふさがる大きな力にあらがいながら生きた女性たちの姿だ。
大学生のネジュマ(リナ・クードリ)は、ナイトクラブのトイレで手づくりのドレスを販売している。夢はファッションデザイナーになることだ。だがイスラム原理主義が台頭し、女性にヒジャブの着用を義務づけるポスターが街中に貼られるようになる──。
ムニア・メドゥール監督自身、アルジェリアで育ち、18歳まで過ごした。ジャーナリズムを専攻する学生として大学寮で暮らしていた頃に、ともに過ごした仲間たちからインスピレーションを得て、登場人物たちをつくり上げたという。
「同じ部屋で過ごした女の子たちのなかにはダンスに興味がある子もいれば、裁縫に夢中の子も、とにかく勉強ができる子も、すぐにでもアルジェリアを離れようとしている子もいた。一言で語られがちな女性たちのさまざまな側面を描きたい、と思いました」
当時の記憶をたぐり寄せ、フィクションを織り交ぜながら物語をつくり上げたが、「映画を通して放たれるエネルギーは、まさにアルジェリアの女性に接して感じるパワーそのもの」と、メドゥール監督は言う。
「例えば、キッチンに女の子たちが集まっていたとしますよね。すると、突然化粧を始める子もいれば、いきなり食材の高騰について嘆きだす女の子もいる。全方向に向けエネルギーがあふれ出す。それこそがアルジェリアの女性たちの姿なんです」