コロナ禍の影響で医療機関への受診控えが問題になっているが、特に深刻さを増しているのが小児科だ。
「患者さんの数は少しずつ戻ってきていますが、去年と比べるとまだまだ。ソーシャルディスタンスや、マスク、手洗いなどのコロナ対策がほかの感染症の予防にも効果があるのか、風邪などの急性疾患で来院する子は今も少ないですね」
こう打ち明けるのは、すがやこどもクリニック(東京都板橋区)院長の菅谷明則医師。
小児科の受診控えは、日本小児科医会が全国400以上の小児科診療所の経営状態を調べた結果からも明らかだ。約9割の施設で5月の外来患者数がコロナ前より20%以上減少。60%以上減ったところも1割弱あった。経営難から閉院する診療所も出始めている。
小児科医の仕事は、子どもたち心身の病気を治すことだけではない。予防接種で子どもたちを感染症から守ることも大きな使命の一つだ。だが、この予防接種についても接種率が下がっている可能性があるという。
予防接種の情報提供・啓発活動を行っているNPO法人「VPD(ワクチンで防げる病気)を知って、子どもを守ろうの会」が予防接種の状況を調査。同会のスマホアプリ「予防接種スケジューラー」の登録データで、生まれて最初に受ける小児用肺炎球菌ワクチンや、幼児期に最初に受ける麻疹(はしか)と風疹の混合ワクチン(MRワクチン)の接種状況をみると、コロナ禍前より減少していることがわかった。
このデータで大幅な登録の減少を見せたのが、BCGワクチンだ。BCGは本来、結核を予防するワクチンだが、接種国で軒並み新型コロナによる死亡者数が少ないことがニュースになった。同会によると、成人のBCGワクチン接種が増え、供給不足が生じたこと、集団接種が延期されたことなどが、理由として考えられるという。
同会はまた予防接種を受けない理由について、保護者にアンケートをとっている。それによると、予防接種を延期した理由として多かったのは「感染が怖かった」という回答で、68%。「接種が遅れても問題ないと思った」も43%あった。