足のスペシャリストとして侍ジャパンでも存在感を示す周東佑京 (c)朝日新聞社
足のスペシャリストとして侍ジャパンでも存在感を示す周東佑京 (c)朝日新聞社

『盗塁』は試合の流れを大きく変える。

 近年はその傾向がより顕著になりつつあり、足の専門家が再び脚光を浴び始めた。

「盗塁は成功したという結果で語られる。結果を出すためにも、覚悟を持ってスタートすることがすべて」

 巨人のリードオフマンとして活躍した松本匡史。セ・リーグのシーズン盗塁記録を持つ男が盗塁の極意について語ってくれた。

 松本匡史は球界に旋風を巻き起こした『盗塁』のスペシャリスト。攻撃時に青い手袋を着用していることから、『青い稲妻』と呼ばれた。

 早稲田大時代にはリーグ通算67試合に出場して57盗塁を記録し、76年ドラフト5位で巨人に入団。1年目に10盗塁を決め、プロ4年目からは外野手のレギュラーに定着した。83年にセ・リーグの年間最多記録となる76盗塁を樹立。プロ通算10年間で盗塁王2回、ダイヤモンドグラブ賞(現ゴールデングラブ賞)を3回受賞した。

「大事なのは走ること。成功率を考えるよりも、まずは盗塁企画を多くすることが大切。アウトでもセーフでも、スタートすることから始まる。成功率を重宝する人も多いが、成功率を考えるとスタートする勇気が出にくくなる。どちらを求めるのかは、その人次第の部分もあるが僕はスタートが大事だと考える」

「ダメなのは走って良い場面、そして走れるチャンスがあるのに走らないこと。そして牽制で刺されること。盗塁を企画しないで終わってしまえば、可能性はゼロということ。まずはトライしてみることで何かも生まれる。完全にスタート失敗しても相手がミスすることもある」

 兎にも角にも「状況に合わせて積極的に走ること」が必要不可欠であるという。盗塁の技術としては、スタート、中間走、スライディングの3つの要素が大事とされているが、40年近く経っても未だ破られない盗塁記録を持つ男は、「スタートこそすべてを左右する」と力説する。

 またスタートに関しては、「スランプが存在する」と語る。よく、「足にはスランプがない」と言われるが、どういうことなのだろうか……。

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「足のスランプ」とは…