「ほとんどの選手が真っ直ぐベースに入っているので、その辺りの技術に伸びしろがある。スライディングで相手を潜り抜けることが大事。スピードを落とさないのは当然のことで、タッチを潜り抜ける。中間走の時に、送球がどこに行っているのかをしっかり観察する。それと逆に行くようにスライディングすることで、タッチを掻い潜ることができる。これは盗塁だけでなく、通常の走塁でも常に活用できる。上記4人などはここを少し意識するだけで、格段に盗塁数も伸びるのではないか」
また盗塁数を伸ばすためには、出塁率も当然必要になってくる。
ともにNPB歴代最多となる通算1065盗塁、シーズン106盗塁の記録を持つ『世界の盗塁王』福本豊も、106盗塁を記録した72年には、打率.301ながら出塁率が.384と高かった。松本も年間76盗塁の83年、打率.294ながら出塁率は.361と多くの出塁を果たした。
「盗塁技術とともに大事なのは出塁率を上げること。福本豊さんが記録を達成した時は4割近かった。そうすれば盗塁数は自然に増える。僕も現役時代そこまで打てなかった。だからこそ常に塁に出ることを考えていた。そして塁に出たらとにかく走る。どちらかといえば福本さんタイプだったと思う。打率よりも出塁率。安打でなくても四球やエラーでも良いので、塁に出たかった」
「野球自体が明らかに変わってきた。例えば、巨人も走れる選手が増えた。そういう選手を多く補強するようになり、試合にも起用する。今の野球はただ打つだけでは通用しない。出塁率、盗塁、走塁というものが見直されて、常に次の塁を目指す野球に変わった。そういう部分で編成の方も走れる選手を獲得している」
試合に勝つために足は大きな武器になる。今年、巨人がリーグ独走状態であるのも、野球の質が変化し時代に則しているのも大きな理由かもしれない。
「本塁打も良いけど、盗塁、走塁はおもしろいよ」
『青い稲妻』が最後につぶやいた言葉には重みがあった。(文中敬称略)
(文・山岡則夫)
●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。