活発なディスカッションで知られる米ハーバード大のマイケル・サンデル教授は、実は日本と緑が深い。愛妻が日本生まれで、日本語に由来する名前を持つ女性だからだ。
ハーバード大での「正義」の講義が話題を集め、日本でも一躍、時の人となったサンデル教授。その当代きっての対話の名手を「とてもシャイな人なの」と言ってのけられるのは、妻のキク・アダットさん(ハーバード大人文学センター研究員)くらいだろう。
サンデル教授との出会いは、大学内で専門の違う教官たちが集まって行われた演説会だった。その打ち合わせの席で、サンデル教授が初対面のキク夫人をお茶に誘ったというのだが、「彼は、多くの教授たちに声をかけるふうを装って、私に声をかけてきました。一緒にコーヒーを飲み、帰り際、彼は私の家の近くまで送ってくれましたが、特にそれ以上言い出す様子もなく、何なんだろうと不思議に思いました」(キク夫人)。
その後、サンデル教授からたびたびランチやお茶の誘いがあったが、当時、多忙だったキク夫人は、応じられなかった。
「実は、私はハーバードの教官とだけは結婚したくないと思っていたんです。目の前の仕事や現実的な事柄ばかりにとらわれて、人生に喜びを見いだそうとしない人たちに思えたからです。でも、私がたびたび誘いを断っても、マイケルは『オーケイ、また時間のあるときに電話をください』と言って、ずっと待ってくれました。そうしたある日、朝起きるとマイケルのことが頭から離れなくなっていました。最初にお茶をして以来、顔も合わせていなかったのに……(笑い)。マジックのような体験でした」
その後、2人はすぐに初デートをしたが、もし、そのときサンデル教授が求婚していたら、「『イエス!』と即答したでしょう」(キク夫人)。実際は、初デートから10カ月後にサンデル教授がプロポーズし、めでたくゴールインした。夫妻にはいま、2人の息子がいる。
※週刊朝日 2013年2月8日号